ティコ・ムーン TYKHO MOON 1997 仏・独・伊
 近未来、月のどこかにある植民地の独裁者とその一族を蝕んでいる青いあざの病気。独裁者は20年前に手術を行ったが病気はまた進行し始めて死の床にある。しかし死んだはずの臓器提供者『ティコ・ムーン』が生きているという噂が広がり、もう一度移植手術をしようと『ティコ・ムーン』を探す独裁者と秘密警察、記憶を失ったティコ・ムーン、それに独裁政権を崩そうと一族を次々狙う謎の暗殺者などが絡み合っていく。 

 明らかにお金かかってないんだけど、セットのセンスが良いので貧乏くさくないのがフランス映画っぽい。 灰色の月の町にジュリー・デルピーの赤いカツラや意味不明な青いイグアナが映える。 きっと昔は人類の希望であった月の植民地が今では空気まで国有化され、崩壊した政治の改革を望む人たちもいる。ちょっと悲観的な話です。序盤は話がわかりにくかったんですけど、終盤の2人で逃げる所からはロマンティックで素敵でした。でもそれはティコ・ムーンのクサい愛の言葉がステキだったわけでなく、「逃げる」行為自体が「駆け落ちフェチ」なアタシの琴線に触れただけなんですけど。あっけなく終わるし、広げた話のしめ方が適当な感じがする。でも嫌いな映画じゃない。やっぱり美術センスの良さかしら。

 (TV放送・字幕) 

 

エネミー・オブ・アメリカ ENEMY OF THE STATE 1998 米
 テロ防止という大義名分で国家が個人のプライバシーを覗くことが可能になる法案に反対していた議員がNSAの高官の策略で殺された。事故に見せかけたが、その現場を偶然隠し撮りしていた人間がいた。NSAはテープの存在を知って奪おうとするが、逃走中にその男は偶然会った大学時代の同級生にテープを渡した直後死んでしまう。NSAは最新のハイテク機器を使ってその同級生を追跡、情報操作や盗聴などで彼を社会的に抹殺しようとする。

 オールスターとは言えないけど、出てくる人出てくる人が見たことある役者さんばっかり。ガブリエル・バーンがたったあれだけしか出てこないのって贅沢だわ。スクリームの映画オタクやドクター・イーブルの息子も出てきます(笑)ターゲットを追跡するハイテクが見物。007に出てきそうで嘘っぽいけどアメリカなら本当に出来そう・・・恐怖することしきり。現実にこんなことが出来る法律が制定されるかもしれないんだぞっていう警告を鳴らす映画です。

 後半からちょっと嘘っぽい展開になるし、最後のTVに映るメッセージが蛇足だと思ったけど、全編通してスピードと緊張感があってすごく面白かったです。

(TV放送・吹き替え)

 

連弾   2000 日 

 資産家の主夫(竹中直人)はキャリアウーマンの妻(天海祐希)の浮気が原因で離婚することになった。ピアノ講師に片思い中の長女は冷静だが、弟は浮気相手の奥さんに浮気現場の写真を見せられたのもあって母親のことを許せない。日常だった家庭の姿がどんどん消えていく。けれど家族であることに変わりはない。

 みんな自分勝手だし、望んでるものが違うから、一番ピリピリしてる冒頭からずっと悲しい。でもどんどん深まる喪失感の中で新しい関係を作ろうとしてるのが最後にはすがすがしく感じられてくる。家族一人一人の日常がただ過ぎていくだけだったりするから本筋に関係ない出来事がいっぱい起こるんだけどそれが笑える。特に長女に付きまとう変な男と、ピアノ教室の男の子。あんな子、見てるだけなら面白いしカワイイと思う。でも実際近くにいたら絶対ウザいね。殴るね。そう思うアタシは子供なのかしら・・・。

 これってミュージカルですよね(笑)登場人物が時折鼻歌で歌う竹中さん作詞作曲の歌の中で、私のお気に入りはミッチーが歌う「♪しゃーれこうべ、しゃれこうべー」ってやつ。てかピアノ弾くミッチー、ステキ過ぎるんですけど!

(TV放送)

 

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶあっぱれ!戦国大合戦 2002 日

 野原家全員が時代劇の女性が登場する同じ夢を見た。その日、シロが庭に掘った穴から戦国時代にタイムスリップしてしまったしんのすけ。そこには春日の国の侍・井尻又兵衛と夢に出てきた廉姫がいた。そして残ったひろし達もしんのすけを連れ戻すために戦国時代へと向かい、野原家は春日の国と隣国との戦いに巻き込まれていく。

 初めて観た前作「オトナ帝国の逆襲」で、20世紀博のターゲットな70年代を懐かしがる年齢でもないのに「ノスタルジーに足を取られて未来を見れない」という状況に涙。そして同時にすんばらしい映画のつくりにビックリ。あなどってたアタシがバカだったよ〜!と態度改めたのですが、まだシリーズ全作品を観れてないです。でも現時点で思うこと。この映画シリーズは、みんな知ってる(とアタシは思う)キャラクターたちが普段のTV放送で浸透してる個性のまま登場します。でもいつものキャラの枠内だけど普段はしないようなことをするから超楽しい。普段のクレヨンしんちゃんの面白さもそのままに、お下品なネタや非日常の世界で、笑ってハラハラして最後にはじーんときてちょっぴり泣かされる。そういういい意味での単純な「映画の娯楽性」がストレートに繰り広げられる。マジでこのシリーズは良くできてます。映画秘宝が褒めちぎってるのなんか気にしないで!映画で何か頭使いたいとか、芸術的刺激を受けたいとか、マニアな知識を増やしたいと思ってない人、絶対観たら楽しめると思う!オススメします!もちろんそれ以外の人にも!

 メインは時代劇。戦術や時代設定がちゃんとしてる所も注目ですが、何より今回、主役が野原家ではない。当然のように家族愛が存在する今回の映画のテーマはです。 ラブです。身分違いの恋をしてる幼馴染の二人がさわやか。純情っていいよね。そしてラスト、しんのすけ達が何故この時代にやってきたかがわかるシーンは涙なくして観れませんでした。。しかしその後があっけないし、騒動が終わった後で登場人物たちが人間的に一歩踏み出したところもまた描写があっさりしてて欲求不満。でも侍も今自分がいる国もなく、恋を引き裂く身分の違いもない未来を知って、あの人はあの場所で何を思うんだろうな。(涙)

(TV放送)

 

ネネットとボニ NENETTE et BONI 1998 仏
 パン屋の奥さんに妄想を抱いてるピザ屋のボニの元に妹のネネットが転がり込んできた。彼女は父親のわからない子供を身ごもって寮を抜け出してきたのだ。仲の悪い父親がネネットを探しに来るのを嫌がって、最初は妹を拒絶していたボニだったが・・・。

 黒髪の女の子がプールに浮かんだスチールを見てから、ずっと気になってた映画でした。とっかかりがそんなのだから少し映像美を期待してた所もあったのですが、私好みのそういうものはプールのシーンくらいしかなかったです。ボニの部屋が汚くておしゃれでした。あとはボニの飼ってるウサギ!めちゃめちゃカワイかったな〜。毛がちょっと立ち気味でまんまるで、毛をワサワサッ!て逆立ててやりたくなるような(笑)そしてパン屋の奥さんの笑顔が印象的でした。本人は一生懸命笑ってるつもりっぽいけど、憂いのあるちょっとセクシーな感じの笑顔をするのですよ。

 ネネットは中絶できる時期を過ぎても無理やり中絶しようとするし、何考えてるかわからないし自分勝手なんだけど、結局兄弟の情で助けてあげるボニに共感。やっぱり兄弟って絆が強いのね。でもでも、最後は・・・・・・ボニの抱いてるパン屋の奥さんへの執着がネネットの子供に転化しただけなんじゃ・・・って気がする。悶々としすぎ。特に妄想たくましくピザ生地こねるシーンが怖かった〜。しかしえらく短絡的だなと思ってしまいます。このシーン作るためにボニをピザ屋にしたのなら、ベタ過ぎだわ。 

(TV放送・字幕)

 

ムーラン・ルージュ MOULIN ROUGE! 2001 米
 舞台は1900年、ボヘミアン革命中のパリ・モンマルトル。ナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」では毎晩妖艶できらびやかなショーが繰り広げられていた。ボヘミアンを夢見てモンマルトルにやってきた青年作家クリスチャンはムーラン・ルージュのトップスター・サティーンと恋に落ちる。しかし彼女は本物の女優になるためにパトロンの公爵のものにならなければいけない。2人は公爵をあしらいながら、企画した舞台の女優と作家として密かに愛しあうが・・・。

 とにかく画面が華やか!劇場で観たかったなぁとメチャ後悔しました。そして劇中歌われる曲のチョイスがなんとも素敵〜私のお気に入りはしっとりした「Your Song」と「One Day I'll Fly Away」と「Come What May」かな。やっと見つけた愛なのに〜♪とかこっちが歌いだしそうになるくらい公爵との契約に縛られるサティーンとどうしても割り切れないクリスチャンが切ないんですが、悪役であるはずの公爵も憎めない。だってラストであんなに涙流してたのって本当にサティーンを好きだったからなのでしょう。ムーラン・ルージュの支配人のジドラーやロートレックを含めて、脇の人達がいい演技してる映画です。しかしファラミア、なんつーカッコしてんの。

 しかし・・・ストーリーで持っていこうとしてる映画じゃないのはわかってるけど、ここまでベタベタでその上「病気」って。しかも、なんだかそのベタなアイテムも取って付けたよな上手く使いこなせてない感じ。映画の早いうちから死ぬことを宣言されているのが、観てて気持ちがイマイチ盛り上がらない理由なのかな。娯楽映画らしくサティーンはナイスタイミングに言いたい事全部言ってゆーっくり死ぬんだけど、どれだけユアンが泣いてようと私はこのシーンで全然泣けなかった。「死ぬ事は分かってたけど・・・」の「けど」がない。誰も定番に逆らわないから流れをただぼんやり見るだけ。クラシカルな映画にするためにわざとそうしてるっぽいですけど。

 ちょっと不満そうな事言いましたが、ミュージカルやコミカルなシーンは楽しかったので全体的にはOKです!

(DVD)

 

悪魔のくちづけ THE SERPENT'S KISS 1997 英・仏・独
 17世紀をまじかに控えたイギリス。資産家のスミザースは美しい妻・ジュリアナのために資材をかけて豪華な庭園を建設することを決意。その設計のために呼び寄せたオランダ人のミニア・クロームは見事なオランダ式庭園を設計するが、それはスミザースを破産に追い込むための計画だった。ジュリアナの従兄弟であるフィッツを含め、それぞれの欲望が交錯する中でクロームは、不思議な力を持ち、自然を愛するがゆえに変人扱いされているスミザースの1人娘・テアに惹かれていく。

 ※ここからはネタバレを含みます。空白部分は反転させてください。

ただひたすら、ユアンの綺麗な瞳を見つめるための映画でした。言いにくいけど内容はあまりおもしろくない。キャッチコピーが「官能の毒に酔いしれる」で、ポスターもユアンとテア嬢のキスシーンのどアップだったから、ホントはもう少し官能的な内容を期待してたんですけどそんな要素は全く無し。そのキスシーン、イケナイ誘惑チックなものかと思ってたら超ラブラブじゃないか。官能的ではなかったけどセリフの性的な暗喩は数箇所あり。しかも下品なちょっとしんどいやつ。まんまと宣伝にだまされたって感じです。

 中身の方はサスペンス。しかし登場人物たちの心理的な駆け引きがくりひろげられるわけではない。案外スミザース一家は単純な思考の持ち主で、ミニア・クロームを誘惑するジュリアナもそんなに悪女じゃないし、スミザースは他の男に色目を使う奥さんに怒ったりもしない。テアも庭園のせいで森が壊されてしまう事と母親の尻軽さにしか感心がないみたいに見える。ミニア・クロームは悪い人ではないとすぐにわかるし、フィッツは最初から目的がはっきりしてますが、それぞれ絡み合っていく複雑な感情が全然ないのです。ミニア・クロームがニセ者とばれるかばれないかでハラハラもできるはず、フィッツに逆らって計画をぶち壊す事も可能。テアに彼女の母親との事を弁解したり愛情を少しくらい表現したりすれば、もうちょっと盛り上がりがあっただろうに。クロームが何もせず、サスペンスのくせに穏やか〜に進行していくところがダメかと。そして フィッツの毒死のシーンでもっと『内側から青くなる』のがわかりやすく撮られていたらよかったのに。他の点でも、あまり伏線を生かしきれてないかな、と不満どころ満載。でもテアがとても雰囲気持ってて、ちゃんとこの映画の不思議パートを全うしていたと思います。

 でもユアンファンとしての視点から観たらまだ良かった方でした。恋する、ただ利用されただけのかわいそうないい人だし。庭園での文字通りの濡れ場の姿はとても素敵でした。クロームの髪型が変だからこのシーンの濡れた髪を後ろに撫で付けた姿は安心して見れるのです(笑)。

(ビデオ・字幕)

 

キャメロット・ガーデンの少女 LAWN DOGS 1997 英・米
 デヴォンは郊外の高級住宅地「キャメロット・ガーデン」に最近引っ越してきた10歳の女の子。城壁のような高い壁に囲まれ、綺麗に区画整理されたクリーンな町に馴染めない中、彼女は森の中でトレーラー暮らしをするトレントという青年に出会う。夢見がちで自分の殻に閉じこもっていたデヴォンは、キャメロット・ガーデンの住人にいつも虐げられているが自由なトレントに興味を持ち、2人はかけがえのない親友になっていく。

 途中までは「純粋な青年と少女の心の交流を描いた物語」に見えますが、これがなかなかどうも。この映画では少女が『無垢』ではなく、いっぱしの『女』のつもりでいるところがすごい。

 ※ここからはネタバレを含みます。空白部分は反転させてください。

 高等社会の歪んだ側面がテーマで、どこかで見た話の集合体という感じがして物語としてはあまり珍しくもなかったりはします。それでもデヴォンを取り巻く環境はそんな物語の中でもひどい方。そしてちゃんとリアル。青年が普通に女の子と遊ぶっていう点も含めて。眼鏡の子供が最後までストーリーに絡んでこないのが残酷だったけれど(マジであのガキ殴りたい。)それ以上にデヴォンとキャメロット・ガーデンの人間達が残酷だった。途中から私立に入った男の子はトロントに同情してるのかと思ったらCDの事件ではブレッドと一緒に砂糖入れてるし、最後の犬の事件では何の迷いもなくデヴォンの父親とプチ山狩りに来るし。躊躇したのって棒で殴る時だけやし。せめて犬を飼っててプチ山狩りに来るのがブレッドだったら少しはすっきりしたのに。でもそれが全て最後に集約される。しかし銃を持っていれば10歳の女の子でも大人を脅せる社会って恐ろしい。

 キャメロット・ガーデンは見ていて本当にムカムカするような町だけど、デヴォンはそれに傷ついてるというより既に問題ではなくなってしまっているように見えます。
 トロントはデヴォンに本当の事を教えてくれた人だけれど、きっとデヴォンはトロントのことを見てない。悲しいけれど。デヴォンとトレントの気持ちの重さはかなり違っていて。デヴォンがトレントを引き込んで、デヴォンが終わらせる。トレントもデヴォンに合わせてあげている感じ。ほとんどのことはデヴォンの頭の中で膨らんだことであって、そして彼女はトレントを逃がすことで自分自身の物語を完結させたのでしょう。本人は女のつもりでも、逆にそれが子供の振舞いになってる。

 ラストは賛否両論でしょうけれども、私は『現実』に『ファンタジー』で勝利したという所は良かったなぁと思います。旅立ったトロントと残ったデヴォンがどうなるのかを考えるよりも、この瞬間を大事にしたい。デヴォンが木に吊るしたたくさんの赤い布がとても綺麗。

(TV放送・字幕)

  

 

 

 

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